デジタル革命を勝ち抜くビジネスデザイン戦略〜お箸にセンサーがついたら(PM シンポジウム2015 より報告)

PM シンポジウム 2015 で話す横塚さん

PM シンポジウム 2015 に参加してきました。二日目の基調講演、横塚裕志さんの「デジタル革命を勝ち抜くビジネスデザイン戦略〜お箸にセンサーがついたら」を聞いてきたので、レポートします。ちょっと「はっとする」サブタイトル。お箸にセンサーがついたら、どんなビジネスがデザインできるでしょうか。。。

横塚さんは、元、東京海上日動システムズ社長、現情報サービス産業協会(JISA)会長であり、ユーザ企業すなわち発注側の立場で「日本のソフトウェア開発を変えないといけない」と叫ばれている方。アジャイルジャパンでも講演頂きました(「デジタル革命には アジャイルがよく似合う」)。

横塚さんは、現在起こっている「デジタル革命」とそれによるビジネスの破壊的な変化について、語り始めました。

トイレがトイレでなくなる日

トイレに何が起こっているか。トイレにセンサーが付き、あなたの出すものを検査し「明日あなたは風邪をひくかもしれません」と伝えてくれる。これはもうトイレを超えている?

お客は銀行の機能は必要としているが、銀行は必要としていない


(http://biometricblog.net/apple-pay-due-out-by-the-end-of-this-week/)

これは、Apple Pay です。アップルが決済に参入。何が起きているのか。もう既存の産業は生き残りの岐路に立っているのだ。全ての産業がデジタル革命によって他分野から「土足で踏み込まれる」。Google Car がでてくるとどうなるか。「車は4輪がついたスマホ」と考えなければならなくなるような事態なのだ。

情報は企業側が持っているのでなく、お客様が持っている

この第4次産業革命の時代に、2年掛けてシステムの企画を練ってもダメだ。昔は市場調査をして企業が情報を市場に出して行った。現在は、情報を持っているのはお客様だ。リアルタイムで届くお客様の行動情報。お客様がネットワーク化されている。

セブンイレブンブランド、お客様側の代弁

情報がお客様側にあり、お客様のリアルタイムな行動情報、お客様同士のコミュニケーション、ネットワークをどう掴むか。セブンイレブンの自社ブランドがなぜ売れているかを考えるとよくわかる。時々刻々の売れ行き情報を一番持っているのがセブンイレブン。今やセブンイレブンはお客様側の代弁者と言えるだろう。

お箸にセンサーがつくと?…

はし

ここで思考実験をしてみたい。お箸にセンサーがついたらどうなるだろうか。。。。

  • 体に良くない、と警告してくれる
  • 熱い!とバイブ
  • いつ何食べたか記録
  • 嫌いなもの、食事時間の不規則、足りないビタミンなど
  • レストランがお客の好みを予想して提案

ようするに、「お箸という道具」から「お客様の体験を良くしていくビジネス」へと思考が進むのだ。

この考え方を、進めて行かないといけない。

そのために大切な手法が2つある。

  • 「デザイン思考」(Design Thinking)
  • 「アジャイル」(Agile)

だ。

デザイン思考(お箸の改善では生まれないアイディア)

日本でなかなか認知されない。日本で Design Thinking の話をした際にInfosys(インフォシス: インド本社のITコンサルティング会社)の方が手を上げて発言してくれた。インフォシスでは、なんと、16万人全員がトレーニング受けている。今、インドは「安いオフショア先」から「新しいビジネスをデザインする」会社へと。

システムを作ることに価値はない。システムを「稼働させ」、「サービスを試す」ことに価値がある

繰り返すが、要件は今や、お客様の側にある。だから要件や仕様を固めてその通りに作っても当たらないのだ。確定しない仕様を作って育てるアジャイル開発でないといけない。システムを作ることには価値はないのだ。むしろ作らない方法を考えたほうがいい。小さく作って稼働させ、サービスを試すのだ。そこからお客様の価値をつかみ取る。

価値は何で測るかというと、顧客企業のビジネス価値÷工数を極大化すること。なるべく作らない。マネジメントすべきは、顧客の価値を作れているかであり、いかに作らないかだ。

value

情報サービス産業は生まれ変わって、お客様とコラボレーションし、一緒に新しいデジタル革命を考えていかないといけない。

エンジニアは接客業となる

そうなると、エンジニアは仕様書に向かっている場合ではない。接客業である。「要件を決めて受託する」というやり方は成り立たないのだ。机上の要件を二年間かけて開発しても当たらないのだ。ビジネスとエンジニアが協調してデジタルビジネスをデザインするプロジェクト。それには、「デザイン思考」それと「アジャイル」、その方法しかない。

楽天的であれ

key-message

これを日本で進めると、必ず、カルチャーやマインドセットの問題に必ずぶつかる。マインドセットを変えないといけない。本質的にできるかどうか分からないプロジェクトなのだ。人間が中心であること、常に実験的であること。確定した仕様などないなかで、どうやってお客様と協調し、楽天的に進めて行けるか。経営には失敗を許容する、チャレンジファンド、のような取り組みが求められる。

今や、プロジェクトが決められた納期で決められたコストで出来ても、売れなければ全く意味がない時代。ビジネスとソフトウェアを作る人がコラボして、お客様の体験を創りだすやり方が必要なのだ。

(おしまい)

とても元気づけられる講演でした、横塚さん、ありがとうございました。

以下、PMシンポジウムのページから、このセッションの概要を参考までに引用します。

概要:すべてのモノにセンサーと通信機能がつく時代になった。結果、世界で第4次産業革命が起きている。ビジネスをテクノロジーでデジタル化することで、今までのビジネスを破壊し、新しいビジネスを創造することが始まっている。今、私たちビジネスマンに求められているものは、顧客中心のアプローチでビジネスをデジタル化し、実現までマネジメントしていく能力と、楽しく失敗しながら前へ前へ進んでいくマインドセットである。

詳しいセッション概要は、こちらをどうぞ(→PMシンポジウム2015のページ)。

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